かみ合わせ治療
かみ合わせが悪いと、
このページでは、
バランスの取れたかみ合わせとは
私たち人間の歯は、通常、親知らずを除いて上下合わせて28本生えています。そして、この上下の歯がかみ合って初めて、食事をしたり、話したりといった機能を果たすことができます。
理想的なかみ合わせの状態は、「一歯対二歯咬合」と呼ばれ、上の歯1本に対して、下の歯2本が噛み合っている状態です。
しかし、必ずしもこの「一歯対二歯咬合」がすべての人に当てはまるわけではありません。 痛みや違和感がなく、日常生活に支障がなければ、それほど心配する必要はありません。
大切なのは、上下の歯がバランスよくかみ合い、顎関節や筋肉に負担がかかっていない状態であることです。
かみ合わせの問題は、年齢とともに現れたり、ある日突然症状が出てくることもあります。「最近、顎が疲れやすい」「口を開けると音がする」など、少しでも気になることがあれば、早めに歯科医院を受診して相談することをおすすめします。
悪いかみ合わせによる主なトラブル
かみ合わせが悪いと、
むし歯や歯周病
不正咬合(悪いかみ合わせ)は、歯磨きがしにくく、プラーク(歯垢)が溜まりやすくなります。
その結果、むし歯や歯周病になりやすくなります。
咬合性外傷
過剰な咬合力が歯や歯周組織にかかり続けることで、歯周組織の破壊や歯の動揺、歯根の吸収などが起こります。
また、歯がすり減ったり、欠けたり、ひび割れたりすることもあります。咬合性外傷は歯周病のリスク因子でもあります。
顎関節症
顎関節やその周りの筋肉に負担がかかり、痛みや違和感、口が開きにくい、顎を動かすと音がするなどの症状を引き起こすことがあります。
詰め物・被せ物の破損
詰め物や被せ物に負担がかかり、破損しやすくなります
上記以外にも、かみ合わせが悪いことで、頭痛、肩こり、首こり、めまい、耳鳴りなどの不定愁訴が現れることもあります。
咬合性外傷について
咬合性外傷とは
咬合性外傷とは、過度な咬合力(噛む力)によって歯に負担がかかり歯の周りの歯周組織(歯ぐきや歯を支える骨など)が損傷してしまうことです。
咬合性外傷の主な症状
歯に痛みを感じて歯科医院を受診される患者様の中には、むし歯の痛みではなく咬合性外傷が原因の痛みで来院される方がいます。
また、「噛むときに痛い」といった症状以外にも、以下のような症状が現れることがあります。
歯がぐらつく
歯周組織がダメージを受けることで、歯がぐらついたり、浮いたような感じがすることがあります。
歯がすり減る
歯ぎしりや食いしばりによって、歯の先端がすり減ったり、平らになったりすることがあります。
歯が欠ける、折れる、ひびが入る
過度な力が加わることで、歯が欠けたり、折れたり、ひびが入ったりすることがあります。
歯がしみる
歯周組織の損傷により、歯の根元が露出して、冷たいものや熱いものがしみることがあります。
詰め物・被せ物が取れる
かみ合わせの異常によって、詰め物や被せ物が頻繁に取れることがあります。
あごが痛い
顎関節や周りの筋肉に負担がかかり、顎の痛みや違和感、口が開けにくいなどの症状が現れることがあります。
頭痛や肩こり、耳鳴りがする
顎関節や咀嚼筋の緊張が、頭痛や肩こりを引き起こすことがあります。
また、顎関節と耳は近い位置にあるため、顎関節の異常が耳鳴りを引き起こすことがあります。
これらの症状の原因となる咬合性外傷には、大きく分けて以下の2つの種類があります。
咬合性外傷の種類と治療法
咬合性外傷は、歯周組織(歯ぐきや歯を支える骨など)へのダメージによって以下の2つに分類されます。
1.一次性咬合性外傷
健康な歯ぐきと骨を持っているのに、強い力が加わって歯周組織が傷ついてしまう状態です。
原因
歯ぎしりや食いしばり、かみ合わせの悪さ、歯並びの乱れ、詰め物や被せ物の高さが合っていないことなどが考えられます。
治療
かみ合わせの検査を行い、必要があれば歯の高さを調整して、噛み合う力を均等にします。また、寝ているときにマウスピース(ナイトガード)をつけることで、歯ぎしりや食いしばりから歯と顎を守ることができます。
- ナイトガードについて詳しくは、同ページ内にある「歯を守るナイトガードとは」の項目をご覧ください。
2.二次性咬合性外傷
歯周病によりすでに歯ぐきや骨が弱っている歯に、さらに力が加わって、歯周組織の破壊が進んでしまう状態です。
原因
歯周病によって歯周組織が壊されていることが原因です。
治療
まずは歯周病の治療を行い、歯ぐきの炎症を抑えて、健康な状態に戻していきます。その後、必要に応じてかみ合わせの調整を行うこともあります。
咬合性外傷は、以下のような特徴を持つ人に起こりやすいです。
咬合性外傷になりやすい人の特徴
以下の特徴に一つでも当てはまる場合は、咬合性外傷を引き起こすリスクが高いです。
気になる方は、早めに歯医者さんに相談してみましょう。
- 1.歯ぎしりを指摘された
- 2.気づくと歯を食いしばっている
- 3.上下の歯をくっつける癖がある(歯列接触癖)
- 4.歯周病と診断されたがまだ治療に行けていない
- 5.昔に治療した詰め物や被せ物が合わなくなっている
- 6.早期接触がある
- 7.歯が抜けたままになっている
歯列接触癖とは
上下の歯を無意識に接触させる癖のことです。
安静時は、通常上下の歯はわずかに離れており、接触するのは食事や会話などの必要な時だけです。
しかし、この癖がある人は、長時間上下の歯を接触させているため、歯や歯周組織に大きな負担をかけてしまいます。
早期接触とは
早期接触とは、かみ合わせたときに、一部の歯だけが先にほかの歯に接触してしまう状態のことです。
本来、バランスの取れたかみ合わせであれば、すべての歯が均等に接触し、噛む力が分散されます。
しかし、早期接触があると、特定の歯に過度な力が集中してしまい、その歯だけがすり減ったり、欠けたり、咬合性外傷を引き起こすリスクが高まります。
歯ぎしり・食いしばりについて
ブラキシズムとは
ブラキシズムとは、歯ぎしりや食いしばりなど、無意識下で行ってしまう口腔の悪習慣のことです。
集中している時やストレスを感じた際に、無意識に歯を食いしばっていることはありませんか?
また、朝起きたときに顎が疲れていたり、歯が痛かったりしませんか?
これらはブラキシズムのサインかもしれません。
ブラキシズムは、自分では気づかないうちに、歯や顎に大きな負担をかけてしまうため、注意が必要です。
ブラキシズムの種類
ブラキシズムは、大きく分けて以下の3つに分類されます。
-
グラインディング
いわゆる「歯ぎしり」のこと。口の中に何もない状態で、上下の歯をギリギリと擦り合わせる状態。
-
クレンチング
いわゆる「食いしばり」のこと。口の中に何もない状態で、上下の歯を接触させて強く噛み締める状態。
-
タッピング
口の中に何もない状態で、歯をカチカチと何度も連続でかみ合わせる運動。
ブラキシズムの原因
ブラキシズムの原因は、まだ完全には解明されていません。
以下のような要因が、単独あるいは複合的に作用して、ブラキシズムを引き起こすと考えられています。
- ストレスや不安、緊張などの精神的な要因
- かみ合わせや歯並びの異常などの身体的な要因
- 睡眠不足、不規則な生活、偏った食生活などの生活習慣
- 遺伝的な要因
これらの要因の中でも、ブラキシズムは特に睡眠中に強く現れることがあります。
これは、睡眠中は脳が起きている時ほど活発に働いていないため、噛む力をうまくコントロールすることができなくなるからです。
睡眠中の噛みしめる力
私たちは、睡眠中に想像以上の力で噛み締めていることがあります。
普段の食事では、奥歯で約10~20kgの力で噛んでいますが、睡眠中の歯ぎしりや食いしばりは、なんと食事の時の約3倍以上の力がかかるといわれています。
なぜ、睡眠中にこれほど強い力がかかってしまうのでしょうか?
それは、睡眠中は脳が起きている時ほど活発に働いていないためです。脳は、噛む力を調整する役割も担っていますが、睡眠中は、この機能が低下してしまいます。
その結果、必要以上の力が歯や顎にかかってしまい、さまざまなトラブルを引き起こします。
歯ぎしりや食いしばりで歯が痛くなるメカニズム
歯ぎしりや食いしばりは、歯の痛みを引き起こすことがあります。
その原因は、歯と骨の間にある薄い膜、「歯根膜」にあります。
歯根膜には、
- クッション機能
-
噛んだ時の衝撃を吸収して、歯や骨を守る
- 圧力分散
-
噛む力を分散させて、歯や骨への負担を減らす
- 感覚受容器
-
噛む力が強すぎると脳に危険信号を送り、「噛む力を弱める」「口を開ける」という指令を出してもらう
という3つの機能があります。
通常、私たちがものを噛む時は、歯根膜のこれらの機能がうまく働いて、歯や骨を守ってくれています。
しかし、歯ぎしりや食いしばりは、無意識のうちに行ってしまうため、歯根膜が脳に危険信号を送っても、脳がそれに気づかず、噛む力のコントロールができなくなります。
その結果、歯根膜に過度な力が加わり、歯根膜が傷ついて炎症を起こし、歯が痛くなるのです。
歯ぎしりや食いしばりで起こる症状
歯ぎしりや食いしばりなどのブラキシズムは、歯の痛み以外にも、全身にさまざまな症状を引き起こす可能性があります。
歯や口の中に関する症状
歯の痛み・知覚過敏
歯がすり減って象牙質が露出したり、歯にひびが入ったりすることで、冷たいものや熱いものがしみやすくなります。
歯の摩耗・破折
歯ぎしりによって歯の先端が平らになったり、欠けたりすることがあります。重症になると、歯の神経が露出して激しい痛みを感じたり、歯が抜けてしまったりすることもあります。
顎関節症
顎の関節に負担がかかり、口を開け閉めするときに痛みや音がしたり、口が開きにくくなったりします。
歯周病の悪化
歯周組織への負担が大きくなり、歯周病を悪化させる可能性があります。
口内炎
頬や舌の内側を噛んでしまい、口内炎ができることがあります。
詰め物・被せ物の破損
歯ぎしりや食いしばりの力で、詰め物や被せ物が外れたり、壊れたりすることがあります。
その他の症状
頭痛や肩こり、耳鳴り
顎やこめかみ、首周りの筋肉が緊張することで、頭痛を引き起こすことがあります。
また、顎関節と耳は近い位置にあるため、顎関節症の影響で耳鳴りがすることがあります。
睡眠障害
歯ぎしりの音で、自分自身や周りの人の睡眠を妨げてしまうことがあります。
歯ぎしり・食いしばりの治療法
歯ぎしりや食いしばりの治療法は、症状や原因によってさまざまです。
当院では、患者様一人一人の状態に合わせて、以下の治療法をご提案しています。
- 咬筋ボトックス注射
- ナイトガード
歯科の咬筋ボトックス注射とは
咬筋ボトックスとは、歯ぎしりや食いしばりのときに使う「咬筋」という筋肉に、ボツリヌス毒素を注射する治療法です。
ボツリヌス毒素を注射すると、筋肉の動きが弱まり、 必要以上に力が入るのを防ぐ効果があります。
美容外科の分野では、この効果を利用して、シワを伸ばしたり、エラを小さくしたりする治療によく使われています。
歯科で行われる咬筋ボトックス注射は、歯ぎしりや食いしばりに使われる咬筋の動きを弱めることで、噛むときにかかる力を軽減し、歯や顎の健康を守る目的で行います。
咬筋ボトックスによる効果
効果の発現には個人差がありますが、一般的には治療後3、4日ほどで効果を実感し始めます。
10日〜2週間後にピークがきて、その後は徐々に効果が薄れながら約3〜6ヶ月ほど持続します。
ボトックス注射の効果は、定期的に注射を続けることで、効果の持続期間が長くなる場合もあります。
咬筋ボトックス治療の費用(自由診療)
-
咬筋ボトックス
注射 - 33,000円(税込)/1回
咬筋ボトックス治療を受ける際の注意点
治療前の注意点
- 妊娠中や授乳中の方、神経筋疾患のある方、重症筋無力症の方、アミノグリコシド系抗生物質やテトラサイクリン系抗生物質を服用中の方などは、咬筋ボトックス治療を受けられない場合があります。
- 治療前は、飲酒を控えましょう。飲酒は、内出血のリスクを高める可能性があります。
- 治療部位に炎症や感染がある場合は、治療を延期する必要があります。
治療後の注意点
- 数時間は注射部位を強くこすったり、マッサージしたりしないようにしましょう。
- 激しい運動や入浴、サウナなどは避け、安静に過ごしましょう。
- 飲酒は控えましょう。飲酒は、内出血や腫れのリスクを高める可能性があります。
- まれに内出血、腫れ、痛み、違和感などが現れることがあります。これらの症状は、通常数日以内に消失しますが、症状が強い場合や長引く場合は、医師に相談しましょう。
その他の注意点
- 歯科で行う咬筋ボトックス注射は、歯や顎関節を過剰な噛む力から守る施術であり、美容効果を主目的とした治療ではありません。
- 咬筋ボトックス注射は、歯や顎関節を守ることを目的としていますが、副次的な効果として、エラの張りの解消や小顔効果などが期待できる場合があります。
歯を守るナイトガードとは
ナイトガードは、歯ぎしりや食いしばりなどから歯を守るためのマウスピースです。
ナイトガードによる効果
- 歯のすり減りや破折を防止する
- セラミックなどの詰め物や被せ物を守る
- 顎関節の負担を軽減する
- 顎周りの筋肉の緊張を和らげ、頭痛や肩こりを軽減する
ただし、ナイトガードを使用したからといって、歯ぎしりや食いしばりの癖がなくなるわけではありません。
あくまでも、睡眠中の歯ぎしり食いしばりから歯や顎関節を守るための装置にすぎません。
ナイトガードの種類と費用
横にスクロールしてご確認ください
| ソフトタイプ | ハードタイプ | |
|---|---|---|
| 素材 | 柔らかい | 硬い |
| メリット | 柔軟性があり、装着時の違和感が少ない | ソフトタイプと比べると、耐久性が高い 噛み締めが強い方でも使用できる |
| デメリット | 耐久性が低く、破損しやすい 噛み締めが強い方には不向き |
ソフトタイプに比べて装着時の違和感が強い場合がある。 |
ナイトガードは、保険適用が可能な治療法です。
3割負担で約5,000円ほどになります。
- 保険の費用はあくまでも目安であり、前後する場合がございます。
顎関節症について
顎関節症とは
顎関節症とは、顎の関節やその周辺の筋肉、靭帯などに異常が起こり、痛みや口が開けにくい、顎を動かすと音が鳴るなどの症状が現れる疾患です。
口を開け閉めしたり、ものを噛んだりするときに、顎の関節や周りの筋肉を使います。
この顎関節や筋肉、靭帯などに、何らかの原因で負担がかかり続けると、顎関節症を発症しやすくなります。
顎関節症の原因
顎関節症の原因は、明らかになっていません。
複数の原因が複雑に絡み合って発症すると考えられており、原因を一つに絞るのは難しいとされています。
一般的に挙げられる主な原因としては、
- 歯並びが悪い
- 歯ぎしり、食いしばりがある
- 睡眠不足や過度なストレスがある
- 顎の使いすぎ
- 頬杖をつく
などが挙げられます。
顎関節症の分類と症状
顎関節症は、症状や原因によって、いくつかのタイプに分類されます。
横にスクロールしてご確認ください
| 主な症状 | 説明 | |
|---|---|---|
| 咀嚼筋痛障害 | 顎を動かすと、頬やこめかみあたりが痛い | 口の開け閉めに使う筋肉に痛みや疲労がある状態。 |
| 顎関節痛障害 | 顎を動かすと、耳の中やその周りが痛い | 顎関節に炎症が起きている状態。 |
| 関節円板障害 | カクンという音がする、口を大きく開けられない | 顎関節の中にある関節円板が正常な位置からずれたり、変形したりしている状態。 |
| 変形性顎関節症 | 顎を動かすとジャリジャリ音がする、口が開けにくい | 顎関節を構成する骨に変化が起こり、変形している状態。 |
顎関節症は、上記の分類が重複して起こる場合もあります。
また、頭痛、耳鳴り、めまい、肩こり、首こりなどを伴うこともあります。
顎関節症の治療法
アスク歯科・矯正歯科では、患者様一人一人の症状や状態に合わせて、最も適していると思われるな治療法をご提案しています。
主な治療法としては、
- 薬物療法
-
消炎鎮痛剤を処方し、炎症を抑え、痛みを和らげます。
- 生活習慣の改善
-
ストレスを減らしたり、歯ぎしりや食いしばりを改善したり、姿勢を正したりすることで、顎関節への負担を軽減します。
- 理学療法
-
顎関節周辺を温めたり、マッサージしたりすることで、血行を促進し、筋肉の緊張を和らげます。
- スプリント療法
-
マウスピース(スプリント)を装着することで、歯ぎしりや食いしばりから歯や顎関節を守ります。
などがあります。
症状が重い場合や、顎関節の構造に異常がある場合は、大学病院など専門の医療機関での外科手術が必要となることがあります。
その際には、提携している大学病院へご紹介させていただきます。